「反省の色が見えない」というオカシサ

佐々木啓

最近妻が忙しそうだ。年度末と言うこともあり、長女が通う幼稚園の様々な委員会活動が大詰めに入っているらしい。今日は○○委員会で会合、明日は××委員会で打ち上げ、と「狭い所にこもって一人で何かしていたい」妻にとってはいろいろな意味で大変なことだろう。

とはいえ大勢で何かを創り上げるというのは楽しいもので、それが形に残るものであるならなおさらだと思う。出来上がったばかりの園の文集を見せてくれた妻はとてもうれしそうだった。

 

 

さて、今日は朝食を食べながら、妻は先日行った会合の内容を話してくれた。その話題のひとつが

 

「今年の反省点を挙げてくださいって言われて」

 

うん、よくあるよね。反省大事だもんね。

ただ私は「反省点を挙げる」という設問に思うところがある。

 

 

反省。自分の言動を省みて改められることがあるかどうか考えること。昨日より今日、今日より明日。よりよい自分に向かって成長していく意思。とても良いことだと思う。

その意味の通りなら。

 

 

私たちは子供の頃から親に、先生に、指導者に「反省しろ!」と言われ続けてきた。そして、自分の体験を振り返ってみると彼らの言う反省とは

 

「しゅん、と落ち込むこと」

 

だったように思う。

 

「反省の色が見えない」「反省している態度とは思えない」という表現だってオカシイではないか。同じ失敗をしないようにどうすればよいか考えるのが「反省」だ。その精神活動をしているかどうか色や態度で見えるのか?

私たちは反省=落ち込むことと教育されてきたので、悲しい顔をして小さくなっていると追及を免れることができた。そして「反省」していないのでまた同じことを繰り返すのだ。

 

それじゃいけないと沈思黙考していると

 

「反省しているのか!」

 

と叱られる。何とも理不尽なり。

 

 

「反省点を挙げる」という言葉は呪文のようなものだ。

真の反省をする前に「反省するんだからちょっと落ち込んで小さくならなくては」と学習した無意識が私たちを支配する。そんな状態でよい考えが湧くとは到底思えない。そこで起きることは「自分たちの悪かった点、至らなかった点探し」であって、それがまた自分を落ち込ませる。

 

真の「反省」には心身の良い状態が必要不可欠だ。疲れ切った体で考えることなどたかが知れているからだ。だから私は自分の言動を省みたりグループに反省を促すときは、ある原則の順番に基づいて行っている。

 

(1)良かった点はどこか

自分の言動で良かったことを考えシェアすることは元気が湧いてくる。言語化できれば意識化できたということで、その良かったことはこれからも続ければいいのだ。

と元気になったところで次の質問。

 

(2)もっと良くするために何ができるか

この質問のよいところは、過去ではなく未来に、出来事ではなく行動に焦点が当たっていることだ。「良くするための行動」を取るには「良くなかったこと」を知らなくてはならない。だが、

 

「良くなかったことは何か」

 

という質問は“良くなかったこと”という過去の変えられない出来事に意識を向けるだけになってしまいがちだ。それに無いかもしれない“良くなかったこと”を探してしまうという副作用もある。

「もっと良くするために何ができるか」は、あるかどうかわからない“良くなかったこと”は置いておいて、目標に向かって自分の行動をオリエンテーションしてくれる。つまり真の「反省」である。

これは先の「良かった点はどこか」で良い状態になっておくことが重要で、“良かったものをもっと良くする”という無意識のマインドセットが私たちに力を発揮させてくれる。

 

 

……などと考えながら妻の話を聴く。どんな重苦しい会合になったことやら。

 

「今年の反省点を挙げてくださいって言われて、まずね、『みんなすっごい楽しかった~!』って」

 

何もしなくともよい状態の人はこうなる。私のアドバイスの出番はなさそうだ。

 

 

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佐々木 啓

公認心理師/ICC認定国際コーチ/同認定国際チームコーチ/同認定国際ライフコーチ   ■略歴:2011年 ICNLP(International Community of NLP)認定NLPトレーナー資格取得(英国) | 2014年 「心理療法を応用した子供への関わり方」をテーマに個人的に講演を始める | 2015年 ICC(International Coaching Community)認定国際コーチ資格取得(英国) | 2016年 北区堀船カンフークラブ設立 | 2019年 公認心理師資格取得 | 2023年 柳生心眼流兵術奥伝印可 師匠より“玄盛”を受命される