問題の一部は「その人の状態」

佐々木啓

前回「無意識にとって “○○するな”と “○○しろ”は同じ意味」と書いた。

 

カッコつけるなら「無意識は否定形をプロセスしない」と言う。

 

そして、「ゴールは行きたい場所であって、行きたくない場所ではない」とも書いた。

 

行先があれば脳みそは勝手にオリエンテーションしてくれる。

 

海に行きたい人 と 山には行きたくない人。

 

体重を維持したい人 と これ以上太りたくない人。

 

適切にお金を使いたい人 と 無駄遣いをしたくない人。

 

素敵な大人になりたい人 と つまらない大人にはなりたくない人(by 佐野元春)

 

前者と後者、どちらが目的地に到達しやすいかと言えば……もうお分かりの通り。

だからコーチングにおいて目標、ゴールは肯定表現で示されなくてはならないのだ。

 

それは望ましい状態のことを考える「アウトカム思考」、望ましい状態に到達するにはどうしたらいいのかを考える「アウトカム志向」でもある。アウトカムとは目標を意味するNLP用語である。

 

対して、「問題志向」というものがある。

望ましい状態と現実の間には常に差がある(もしも差がなかったら望ましい状態は存在しない。原理的に)。その差のことを人は「問題」と表現するわけだが、なぜその差があるのかを考えるのが「問題志向」である。

 

良し悪しではない。人は必要があってそう考えるのだから。

だが、ことコーチングに関しては前者、「アウトカム思考/志向」をお勧めする。

それはクライエントのモチベーションにも関わることだからだ。

 

望ましい状態に到達していない理由は様々だ。

お金がない、時間がない、能力がない、そのような環境にいない、何をしていいか分からない、そもそも自分にできるとは思えない等々。

 

そのような窮屈な精神状態で考え出されるアイデアは当然窮屈なものである。

 

だからこそクライエントにはまずゴールを、目指したいものを、望ましい状態を思い描いてもらう必要がある。到達したとイメージしてもらう必要がある。

すべての現実的なしがらみは脇に置いておいて、想像の羽を広げてもらうのだ。

 

イメージするのはタダである。ただである上に、何と身体の状態も「ゴールに到達したそれ」になってしまうのだからお得だ。

 

その様なエネルギーのある状態になってもお金や時間がないことには変わりはない。

だが、先ほどまでの現実に立脚した身体から出てくるものとは、明らかに質の違うアイデアが湧いてくることだろう。

 

私の大好きなNLPの言葉がある。曰く、

「問題とは『これが問題だ』と思っているその人の状態が問題の一部を成している」

 

問題とはある視点から見た現実現象である。気楽に見たって深刻に見たって問題自体は変わらない。だからこそ気楽に取り掛かろうぜ、というアイデア。

 

私は人が思うより、「コーチに必要なのは楽天的な性格だ」という考えである。

 

今回の私の結論。

 

【まずは目いっぱいゴールを描こう。何せ楽しいし、現実と照らし合わせるのはいつでもできる】

佐々木 啓

公認心理師/ICC認定国際コーチ/同認定国際チームコーチ/同認定国際ライフコーチ   ■略歴:2011年 ICNLP(International Community of NLP)認定NLPトレーナー資格取得(英国) | 2014年 「心理療法を応用した子供への関わり方」をテーマに個人的に講演を始める | 2015年 ICC(International Coaching Community)認定国際コーチ資格取得(英国) | 2016年 北区堀船カンフークラブ設立 | 2019年 公認心理師資格取得 | 2023年 柳生心眼流兵術奥伝印可 師匠より“玄盛”を受命される